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活動報告

東商女性会研修部主催「スプリングセミナー2010」

【概要】

◆平成22年3月24日(水)

◆於:東商ビル

◆スケジュール
13:00~13:15
開会・オリエンテーション
13:15~14:45
研修1「父母に 孝に 兄弟に 友に ~吉田松陰生誕180年に当たり~」
慶応大学名誉教授・平成国際大学名誉学長 中村 勝範 氏
14:45~15:15
コーヒーブレイク
15:15~16:45
研修2「経営者に今必要な環境への取組み~ラムサールと湿地から考える~」
ラムサールセンター事務局長 中村 玲子 氏
17:00~19:00
懇親会(立食)

【開会・オリエンテーション】

 総合司会の飯沼和子会員により、吉川稲美女性会会長が紹介され「景気も冷え込んでいる昨今、どう対処しようかと悩むとき、先人・先輩の話を自分の事業に生かしていくことはひとつの指針となります。人の話は自分の先入観を除いて聞かせて頂くと心に染みこんで参ります。一緒に楽しみに聞かせていただきたいと思います。」とのご挨拶がありました。

【研修1】

13:15~14:45研修1
「父母に 孝に 兄弟に 友に ~吉田松陰生誕180年に当たり~」
慶応大学名誉教授・平成国際大学名誉学長 中村 勝範 氏

 日本人の魂を伝えた先人の教えから学ぶことは、研修部の一つのテーマでもあります。
 今回は、中村勝範先生から本年で生誕180年を迎えた吉田松陰先生を中心に様々な角度からのお話を伺いました。
 まず、明治23年10月30日に明治天皇の名前で発表された教育勅語から「教育勅語の最後には“朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ(私もまた国民の皆さんと共に祖父の教えを胸に抱いて、立派な日本人となるように心から念願するものであります)”と結ばれています。明治天皇ご自身が国民にさせるだけでなく私もそうするとおっしゃっているということは、自分が率先して社員以上に働くという意味であります。」という力強いお話から始まりました。
 吉田松陰先生は長州藩の貧しい下級武士の家に生まれ、幼くして叔父である吉田大助の養子となりました。吉田家は長州藩の兵学師範の家柄でしたが、まもなく叔父が急逝したため、もう1人の叔父である玉木文之進に兵法を学びました。そして11歳の時、毛利侯御前での兵学講義が、史実にある戦いの布陣などを実例に挙げて話すのが、とてもおもしろいと認められ、たちまちその名が知れ渡るようになったのです。九州遊学中に知り合った宮部鼎蔵とともに東北地方の視察を計画したのですが、関所のパスポートが届かないまま出発日の約束を守ることを優先し、脱藩という罪に問われます。その後米国の艦船に乗船を企てた罪で投獄されましたが出獄を許され、故郷の萩で松下村塾を主宰し、幕末維新の指導者となる後進の教育にあたりました。しかし、安政の大獄により再び投獄され、徳川幕府に弓を引いたものとしてわずか29歳で江戸伝馬町の露と消え、小塚原回向院に埋葬されました。その短い生涯の中で強い影響力をもって多くの偉人を育成し、近代日本の礎を築いた師として現代も慕われ続けています。
 企業内研修というと、まずはその技術や知識の習得をすることのみが目的となり、人としての基本を教育するという企業が少なくなりました。しかし、教育はすべてに優先し、人としての基本をしっかり身につけてこそ、技術や知識の習得が意味あるものになることを、経営者は忘れてはならないと、中村先生はおっしゃいます。
 日本には特別な宗教教育はありませんでしたが、新渡戸稲造氏がその著書、『武士道』(Bushido:The soul of Japan)で 世界に紹介したように、道徳としての「武士道」がありました。
 正義の心を持ち、世のため、人のために尽くし、仁徳のある人になるよう鍛錬を重ねることが武士道であり、それが指導者としても最も大切であるという原則は、時を超えて現代のリーダーにも求められる重要な資質といえるでしょう。

(記録:後藤愛子)

【研修2】

15:15~16:45研修2
「経営者に今必要な環境への取組み~ラムサールと湿地から考える~」
ラムサールセンター事務局長 中村 玲子 氏

 湿地での生物多様性保護を通して地球環境保護に取り組む、ラムサールセンター事務局長の中村玲子先生のお話を伺いました。
ラムサール条約とは、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」で、1971年にイランのラムサールにおいて締結されました。これは環境に関する国際条約の先駆で、湿地生態系そのものを対象とするもので、159カ国が加盟しています。
 湿地とは、水のあるところ全てをいいます。河川、湖沼、湿原、泉、地下水系、水田、貯水池、干潟、サンゴ礁等、人工・天然、永続的・一時的、淡水・塩水を問わず、低潮時水深6m以下のものを指します。
 この条約の理念は、湿地の賢明な利用、即ち、湿地のもたらす様々な恩恵を損なわずに維持することです。締約国としての責務は、国際的に重要な湿地としてその国内で適当な湿地を指定し登録することですが、さらにその保護責任を全うするために、国内法で、様々な環境規制が行われています。
 日本の登録湿地は、釧路湿原、尾瀬、琵琶湖、屋久島永田浜、慶良間諸島海域等10haから6万7千haのものまで37ヶ所。世界中では1haから656万haまで1887ヶ所に及びます。
 中村先生が事務局長を務めていらっしゃるラムサールセンターは、1990年に設立されたNGOで、約100名の個人会員で構成され、25%が日本以外のアジア人です。年会費は8,000円で、数名の無給のスタッフと学生スタッフにより、年間1,200万円の事業予算で、日本とアジアで湿地の賢明な利用を普及するべく、教育や啓蒙活動を行っています。
 アジアの大学や環境省とアジア湿地シンポジウムを共催した他、アジア・アフリカや、日中韓の子ども湿地交流を行い、子どもたちも積極的に関与しました。
このような、湿地が育む様々な生物環境をさらに包括的に保護するものとして、1992年に生物多様性条約が締結されました。これは、特定の生物の行動や生息地を対象とするのではなく、地球上の生物の多様性を包括的に保全することで豊かな環境を守ろうとする条約です。「地球のいのち、つないでいこう」をスローガンに今年は名古屋市で第10回締約国会議(COP10)が開かれます。
 子ども達も、KODOMOラムサール(子ども湿地交流)に引き続き、KODOMOバイオダイバシティとして、生物多様性を守る運動を続けています。
 地球環境を守る国際的なNGOに、IUCN国際自然保護連合(1948年設立)があります。本部はスイスにあり、スタッフは約千人、年間予算の規模は118億円、国家会員は86カ国です。日本は1995年に加入し、年間4,500万円の分担金を支払っているそうです。
 日本の登録環境NGOは約4,500。野鳥の会のような大きな組織と小さい組織は半々で、さらに小さな市民グループが沢山あります。活動費用は、会費の他国家や公共団体の特別会計、助成金、企業の寄付や社員の人的援助によって賄われています。
 地球環境保全に貢献するには、段階的にいくつもの方法があります。まず、関心を持つこと。できることから行動すること。寄付をすること。寄贈先がわからなければ、地球環境保全基金に寄付をすると、適正に寄付金を各活動に配分してもらえます。さらには、パートナーシップ事業を始める、勉強会や講演会を企画する。、などです。
 中村先生のお話は、湿地の生態系自体のお話かと思っていましたが、組織としての取組み方を中心とした内容でした。環境に関わる人たちの熱意と努力だけでなく、条約を締結するまでの各国間の思惑、環境保護団体の懐事情、子どもたちを通しての理念の広がりなどを知ることができ、地球を守ることを通して、人間も捨てたものではないという勇気が湧いてくる、そんな講義でした。

(記録:藤岡実佐子)

【懇親会】

17:00~19:00 懇親会(立食)

 講師の中村玲子先生にもご参加いただき、和やかで楽しい立食パーティになりました。
 美味しい料理やワインに会話が弾み、あちらこちらで名刺交換する風景も見られ、参加していただいた会員相互の懇親を深める絶好の機会だったと思います。
 今回の研修会は、研修部メンバーが受付、司会、質問、写真、記録などの係を分担し、企画会議から当日の準備、運営までを行いました。
 研修が無事終了するまで、協力し合い、楽しく充実した研修会を過ごすことができました。今後、より多くの女性会会員の方にもぜひ研修部のメンバーになっていただき、企画から運営までをご一緒して、よりよい研修会を開催することができればと思います。

(記録:武藤正子)