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活動報告

「美枝きもの資料館」「八ッ沢水力発電所」など視察会に参加して

11月29日に実施された、東商女性会視察会に参加させて頂き、晩秋の一日を大変有意義に過ごすことができた。
今回の視察会は、山梨県内所在の「美枝きもの資料館」見学と、東京電力「八ッ沢水力発電所」の視察を主たる目的としており、その間にフジッコワイナリー工場の視察なども含まれる、盛り沢山の内容であった。

東京商工会議所前から私達参加者を乗せたチャーターバスは、ほぼ定刻通り一路甲斐路を目指し快調にスタートした。途中車内では、吉川会長からの御挨拶を戴き、その中で、東京商工会議所創設者渋沢栄一翁の「論語と算盤」を引用され、「道徳経済合一説」という理念にも触れる内容でもあり、深く考えさせられた。
その後、参加メンバーの自己紹介が進むにつれ、車窓の風景は甲斐の国へ移り、バスガイドさんの武田信玄公とその一族、家臣達についての歴史解説に耳を傾けているうちに、第一の目的地「美枝きもの資料館」へ到着した。

ここは、山梨県南巨摩郡身延町三沢に位置し、創設者である上田美枝氏が資財を投じて昭和53年に建造された。本年は、故高松宮妃喜久子殿下のご薨去より三年祭にあたり、その御遺徳を偲び「高松宮妃喜久子殿下を偲ぶ」特別展が開催されていた。
上田氏のお嬢様から、展示物についての説明をお聞きしたが、江戸、明治、大正、昭和という歴史の流れの中にあって、日本人の「キモノ」がどの様に変遷して行ったかということを知る機会となった。高貴な身分の方が着用なさる芸術作品にも等しい雅なキモノと、一般庶民が着ていたキモノとの対比も大変興味深く拝見させて戴いた。貴重な展示品の数々を目の当りにし、日本の伝統文化の真髄に触れた様な感動を覚えた。

昼食を挟んでの午後の日程は、スピードアップしての視察となり、最終目的地である東京電力葛野川PR館へとバスは移動した。大月市賑岡町強瀬にある当館では、葛野川発電所における水力発電のシステムについてレクチャーを受け、世界最大級の落差を誇る揚水発電所の概要を知ることができた。
その後、発電所の見学バスに乗り換え、明治40年完成の猿橋取水口を車窓から眺め、百年後の今日に至るまでびくともしない確かな技術に驚嘆させられた。
ここ山梨県には、明治40年に、東京電力(当時は東京電灯)が駒橋発電所において初の55KV送電を行っており、早稲田変電所を経て麻布、麹町一帯に供給されたそうである。それ以来今日に至るまで、電気の最大消費地である東京への供給が続けられているのだろう。
電気の存在なくしてはもはや成り立たない現代社会にあって、エネルギー問題を切実なものとして捉えられないのは何故だろうかという疑問を残しつつ、私の興味は日本の三奇橋の一つである猿橋へと移って行った。

桂川は河岸段丘の底を流れる渓流である。渓谷は紅葉に彩られ、そこに掛けられている木製の猿橋は、周囲の自然景観と見事に調和して美しい限りであった。猿橋の歴史は古く、地元の伝説によると、百済の造園博士、志羅呼が白猿の群れが蔦や蔓を用いて河を渡るのを見てヒントを得、架橋したといわれている。眼下に目をやると八ッ沢発電所一号水路(平成9年国の文化財登録)が見える。桂川に掛かるこの水路も人間の手によるものだが、そのコントラストが面白かった。

今回の日帰り視察会は、山梨県を訪ね甲斐の国を知る良い機会であった。

(記:中西志保美)