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活動報告

関東商工会議所女性会連合会、東京商工会議所女性会共催
松平定知氏講演会

テーマ  「私の取材ノート ~『その時歴史は動いた』の現場から~」
開催日 3月5日午後2時~3時半
開催場所 東商ホール(東商ビル4F)

3月5日、東商ホールにおいて、関東商工会議所女性会連合会、東京商工会議所女性会共催による、元NHKエグゼクティブ・アナウンサーの松平定知氏の講演が行われましたが、知名度の高い方だけに、会場の東商ホールは多くの参加者でいっぱいとなりました。

小泉関商女性連会長の「『その時歴史が動いた』は大好きな番組で学ぶことが多く、いつも必ず観ています。」というごあいさつの後、いよいよ講演会の始まりです。

多くの拍手に迎えられ登場した松平氏は、さすがに話すプロだけあって、穏やかでよく響く声で、『その時歴史が動いた』という長寿番組がなぜ視聴者にこれだけ支持され、高いクオリティを維持できるのかという話をはじめられました。

それによると、松平氏と番組関係者の中では、4つのポリシーを大事にしているそうです。

  1. 現場を大切にする番組にする
    歴史事項の起きた現場に誰かが必ず行くことで、その場の風に吹かれ、感じた匂いを伝えている。
  2. 専門家が視聴しても耐えうるクオリティの高い番組にする
    軽いノリのものではなく、専門家も楽しめる品質を維持する。
  3. 嘘をつかない番組にする
    視聴率は大切であるけれど、そのために良心は売らない。感動を強要せず、想像で物を語らない。論拠を持って愚直に作ることで信頼・信用を得る。
  4. 歴史の考え方、捉え方を見直す番組にする
    歴史は暗記モノではなく、一人の人間の涙や汗、感動が語るドラマであることを伝える。

この中で4番目についての話を、歴史上の二人の女性、篤姫とお市の方を例に挙げて話してくださいました。

時代に翻弄された女性:篤姫

現在大河ドラマにて放映中の篤姫の人生はまさに波乱万丈でした。薩摩藩・島津斉彬の養女であった篤姫は、養父の思惑に従って第13代将軍・家定の御台所(正室)となり、家定没後は、天璋院篤姫(てんしょういん あつひめ)と名乗り、後に将軍の代わりとなって、倒幕軍に江戸城を明け渡し、徳川時代に幕を下ろします。
今までは、皇女和宮をいじめた「鬼姑(?)」のイメージが強かった篤姫ですが、宮尾登美子さんによって、徳川家を守ろうとした女性という、別の観点から篤姫が描かれました。

従来、江戸城無血開城の功労者は勝海舟と西郷隆盛で、二人の男性の功績と言われてきましたが、実は、篤姫が西郷隆盛に手紙を書き、和宮も政府軍に江戸には入らぬようと何度も手紙を書いたためで、この歴史的快挙は、本当は4人の合作であったという話が、「歴史の陰に女あり」を感じさせました。この2人の女性の活躍の事実は、片や2年前島津家の古文書の中から、片や政府軍の子孫邸から相次いで、それらの手紙が見つかったことから判明したのです。

養父(薩摩藩)の政治的策謀のため好まぬところに嫁がされ、その後は、実家から戦いを挑まれるという波乱の人生を歩んだ篤姫は、江戸城を出たあとは、旧薩摩藩島津家からの資金援助の申し出も「志まで政治の道具にされたくない」と断り、質素につましく暮らしたと言うことです。

美しさのために翻弄された女性:お市の方

政略結婚の末、実家から婚家を攻められたという2例目は、織田信長の妹であった、歴史上の美女、お市の方の話です。
お市の方は、信長の命により浅井長政と政略結婚し、織田家と浅井家は同盟を結びますが、信長が浅井家と関係の深い越前の朝倉義景を攻めた際、長政が味方につかなかったため断絶状態となります。
姉川の戦いの羽柴秀吉が攻め落とす寸前の小谷城で、信長は一時攻撃を中止し、お市の方と子供たちを逃がし、敗北した長政は自害します。
その後、お市の方は、秀吉と対立関係にあった織田信長の三男、信孝の仲介で柴田勝家と再婚しますが、翌年、賤ヶ岳の戦いで秀吉と最後の決戦となったとき、姉川の戦いを覚えていた秀吉は、お市の方を娶りたいために一時休戦を試みますが、お市の方は「自分の人生は自分が決めます。」と、3人の娘(茶々・初・江)だけを逃がし、勝家と共に越前北ノ庄城内で自害しました。
そして、このあと残された3人の娘もまた波乱に富んだ人生を歩むことになり、歴史は続いていくのです。

このように歴史とは、無機的な暗記物では決してなく、一人の人生を巡る人間模様であり、人間ドラマであることを、一人でも多くの皆さんに知っていただくために今後も番組を続けていきたいと言う言葉で、松平氏は講演を締めくくられました。

そして、最後に吉川会長からの「人間の宿命を思うと何ともいえない気分にさせられた。人生如何に生きるかを考える良い機会になったと思います。」との言葉で会場は拍手となり、講演は終了いたしました。

(記事:林 香都恵)
(写真:伏屋 ひろ美)