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活動報告

関東商工会議所女性会連合会・東京商工会議所女性会 共催講演会
共催講演会「気持ちを楽にしてくれる人生の法則」-精神科医からの提言-

講師:香山リカ氏 精神科医・立教大学心理学部映像身体学科教授

 平成23年3月11日、東商ホールにおいて、関東商工会議所女性会連合会・東京商工会議所女性会共催講演会が精神科医の香山リカ氏をお迎えして行われました。600席のホールはほぼ満席となり、参加者の期待の度合いが伺えました。

 まず、小泉清子関東商工会議所女性会連合会会長から、「本日は関東商工会議所女性会連合会・東京商工会議所女性会共催のイベントに遠方から大勢の方においでいただき、また、講師の香山先生も大変ご多忙な中ご快諾いただき、誠にありがとうございました。香山先生は、たくさんの講演やコメンテーターとしてご活躍なさっている方です。今日の‘気持ちを楽にしてくれる人生の法則’というテーマは、この不安な時代の中、とてもいいテーマだと思います。悩み多き時代だからこそ、今日は大変楽しみに期待しております」とご挨拶があり、講師の香山リカ氏が登壇されました。

 「私は精神科医という仕事をしております。私の仕事場である狭い診療室から見えてくる話が皆様のビジネスや日常に共通することがあれば幸いです。
 今、世の中が不況と言われていて、エコノミストや経済学者が様々なアイディアや対策を提案していますが、どれが正しいのかさっぱりわかりません。世の中が一向に良くならないのはなぜなのか不思議に思い、遅ればせながら経済学の入門書を読んでみました。
 それによると、経済学者である彼らがモデルとしているのは、経済人(ホモ・エコノミクス)といって、経済活動において自己利益のみに従って行動する完全に合理的な存在であるというのです。人間はこんな人ばかりではありません。人にはいろいろなタイプがあります。人間は人それぞれ、法則に従って動くものではありません。だから子育ても夫婦関係も従業員との関係もままならないのです。だから経済学者・エコノミストの予測は当たらないのです。

 私の狭い診察室にはいろいろな人がやってきます。彼らの話を聞いていると、そこから人間社会が浮かび上がってくるといつも学ばされます。精神科医と聞いても先入観や偏見を持たずニュートラルな気持ちで、関心を持ってくださる皆様なので、今この時代だからこそ、心のあり方の大事さに気づいてくださったのだと思います。それは素晴らしいことです。
 精神科に来る原因・理由は、本人に問題があると思いがちですが、実はそうでないことが多いのです。夜道を歩いていた女性がひったくりにあったら、夜歩いている人が悪いと決めつける。災害にあったらそんなところに住んでいるのが悪いと決めつける。人にはいろいろなことが起こるものなのに、人はどうしても‘犯人捜し(原因を突き止める) ’をしたくなるのです。何を見ても‘人’に不注意な点があると決めたがるのです。
 それは‘防衛のメカニズム’によるもので、人間が常に不安に苛まれていることから来ています。‘これは私に関係ない。だから私は平気’と自己暗示をかけないと暮らせなくなっているのです。つまり、相手の非を見つけたいのです。しかし、これは意味がありません。
 健康に気をつけていても癌になる人もいるし、ヘビースモーカーでも平気な人もいるように、生き方や健康に理由を求めても仕方がないのです。たまたま起きてしまったことが深みにはまるケースもあります。それは誰にでも起こりうることで、その人のせいにするわけにはいきません。人生とは想定外のアクシデント・トラブルの連続なのです。
 そんな時、対処法がないわけではありません。‘誰にでも起きること’とうろたえずあわてず現実を受け止めて、最善策を考えることがよいのですが、私たちはそれが苦手です。どうしても過去にさかのぼって鬱々としてしまいます。でも、それをしても仕方がない。ウツになるだけです。すぐに答えを出しすぎてはいけません。」 と、話が佳境に入った2時45分ごろ、会場に気持ちの悪い横揺れが起こり、皆様ご承知の三陸沖を震源に国内観測史上最大のM9.0の東日本大震災が発生しました。東京の震度は5強で、参加者は恐怖の中皇居前広場へ避難し、残念ながら講演会は中止されました。この時は、このような大きな地震になっていようとは想像もしませんでした。多くの被害を被った被災地の方へのお見舞いと、お亡くなりになった方へ哀悼の意を表します。

(記:広報担当)