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活動報告

東京・武蔵野・町田商工会議所女性会共催
建築家の安藤忠雄氏講演会「人を豊かにする環境・まちづくり」

平成21年5月19日(火)東商ホールにおいて、東京・武蔵野・町田商工会議所女性会共催の講演会が建築家の安藤忠雄氏をお迎えして行われました。
世界の建築家の講演ということもあって、女性会開催のイベントにもかかわらず、男性の参加者が目立ちました。
まず、東京商工会議所女性会吉川稲美会長から「今年は厳しい状況が続いておりますが、この不況をどのような価値観や思いを持って取り組んでいけばよいのか、安藤先生からヒントをいただきましょう」とのご挨拶があり、安藤氏の講演が始まりました。
(安藤氏の講演内容は以下の通り)

本日のテーマは「人を豊かにする環境・まちづくり」ということだが、外国に行くと日本がいかに遅れているかがわかる。しかし、日本人にはその意識が低い。私のオフィスには多くの外国人見学者がやってくるが、彼らは「そこに入らないでください」というところにどんどん入っていく。それはマナー違反のようだが、彼らは自分で考え興味のある行動をしている。しかし日本人はダメだといわれれば絶対にしないだろう。不況を脱するためには、彼らのような自分で考えて行動する自主性が必要なのではないだろうか。

私は昔、一心不乱に仕事に打ち込む大工さんの姿に感動し、自分もそうなりたいと思った。しかし、大学に行けなかったので、独力でその道を切り開いた。その中で最初のチャンスを与えてもらったのは、「都市は文化と自然」を生かすべきだという旧国鉄大阪駅周辺再開発計画の提案が通ったことだ。リーダーは常に先を読んでどうすることがベストかを決定しなければならない。それができないことが不況の原因をつくったのだ。
最近の日本人はメールとパソコンばかりして何事も無関心すぎる。あきらめずに何事も押し通すべきだし、自分の目で見たものをもっと信じるべきだ。いくら情報を集めても、何も発信しなければチャンスは回ってこない。

1979年に日本建築学会賞を受賞した「住吉の長屋」は、自分の工夫で暮らすことをコンセプトとして造ったものだ。私はいつでも夢や哲学のあるおもしろいものを創りたい。そのためには施主の話さえ聞かないこともある。それくらい夢中になることや理想を追って走ってほしいのに、今の日本人はその気持ちを忘れている。サントリーの佐治さんなどはまさに青春を生きた人だ。今はこのようなタイプの人を見ないし、子供の目が死んでいる。それがとても気になる。
与えられたものを受け取るだけで国や行政の責任にする。日本人は責任を持たない国民だ。今後は箱(ハードウエア)の時代は終わり、ソフトウエアの時代だ。不況を乗り切りたいなら夢を持つことだ。

私は、建築とは建物を建てるだけでなく周辺の環境も整え植樹を行い、つくったものを育てる発想であるべきと思っている。東京湾のゴミの埋立地を、緑豊かな森 に変える「海の森」プロジェクトや瀬戸内海一帯にオリーブを植樹する「瀬戸内オリーブ基金」はその一環だ。こうやって子供達に感性を教えていかなければ次の時代はない。おもしろいことができないと長続きしないからだ。そして建物を作った人と毎年同窓会をし、人間関係を広げることで仕事も生まれていく。世界から「日本人はいなくてもよい民族」といわれることがないよう、自分たちができること、民族としてできること、国としての日本人をもう一度考え直すべき時期が来ているように思う。

万雷の拍手のあと、町田商工会議所女性会青木旦美副会長より安藤氏に花束が贈呈され、武蔵野商工会議所女性会間野百合子会長より閉会の辞が述べられ、講演は終了となりました。

(記:林 香都恵)